いわゆる新臨床研修制度の影響で大学病院に医師が集まらなくなり、関連病院への医師の供給がストップする事例が相次いでいる(まあ、引き上げともいいますね)。
まあ、江別市立病院や夕張市立病院の件はトラブルという気がしないでもないけれど、いわゆる「医師不足」という観点から見ると、室蘭の日鋼記念病院あたりから新聞ネタとして登場し、旭川日赤をはじめとする道北の公的病院。そして、今年に入ってからは根室市立病院の医師引き上げ等が大きく報道された。
そして、小樽協会病院や市立小樽病院の診療機能の縮小。市立函館病院の産婦人科・精神科の外来縮小。釧路労災病院の小児科と産婦人科機能を釧路日赤病院に集約化。市立釧路総合病院の循環器科医師減員など、地域の基幹病院でも少しずつではあるが医師は減っているのだ。
色々とニュースを見てみると診療科目では、やはり小児科と産婦人科が圧倒的に多く、脳外科や循環器科などハードな分野も影響が大きい。地域としてはいわゆる僻地は勿論の事だが、圧倒的に道北の病院から医師が引き上げているわけだ。
言い方を変えれば「旭川医大系列の病院で医師の引き上げが多い」という事でもある。根室も稚内も名寄も、もちろん旭川市内も例外ではない。旭川日赤病院というのは北海道でも指折りの大病院。そこから小児科や産婦人科が撤退する(恐れ)というのはただ事ではないのだ。
1970年代、北海道に国立医大を誘致する際、釧路と旭川はデットヒートを繰り広げ、旭川が勝った。従って、旭川の大病院は旭川医大から医師の安定的供給を得ていたが、釧路の大病院は旧来通り北大と札幌医大から医師の供給を受けている所が多い。
しかし、何たる皮肉。旭川医大病院の研修医マッチング率が道内3大学の中でも群を抜いて低く、大学病院さえも人出不足。医大誘致の勝利者である旭川の方が敗者の釧路よりも医師の引き上げに遭っているのだ(まあ、北大も札幌医大も人手不足だとは思うけど)。
釧路の大病院(市立、日赤、労災)の場合、医師の数は減っているものの、診療科の休診は釧路労災の小児科と産婦人科ぐらいのものであり、逆に医師が増えている科もある(この傾向は帯広も一緒)。しかし、旭川日赤の場合は医師の集約化ではなく、単純に診療科の廃止の可能性がある(医師はかなり減っている)。30年以上前に、このような現象に陥るとは誰も想像しなかったに違いない。
こういった医師の偏在(地方の医師不足)は北海道だけではなく全国で発生しており、マスコミが盛んにキャンペーンを張っている。今の政治や行政は感情論に弱いので、応急処置的なものでも、こういった事態を回避する手段を取らざるを得なくなるだろう。最も考えられるのが、「医師の養成には税金が投入されている」という一種の屁理屈で、初期研修を終えた医師が数年間、地方の基幹病院勤務を義務づけられるという事だろう。きっと、基幹病院から更に僻地の病院へ医師を派遣するシステムも作るに違いない。だが、地方から医師が逃げていくのは「人間扱いされない程のハードワーク」だけではなく、「高い給料を払ってるんだから死ぬまで働け!」という地方自治体の首長の認識不足にあると思う。
厚労省は「医師不足は地域が何とかする事」とクールな姿勢を取っているが、これは、財政再建団体入りをする夕張市を散々脅しておいて、後で救いの手をさしのべる(ショック療法をしないと地方自治体は何も学習しない事を熟知していたのでは?)方法と一緒だ。いつまでも「中央省庁に陳情すれば何とかなる」なんて事を許してはおけないという事だが、余り酷い状況が続けば政府も何とかするに決まってる。
特に自治体病院の場合は、「自分の病院で医師を育てる」なんて事を思わずに運営されてきた所が多い訳で、国や道や大学に陳情に行っているうちはきっとダメなんだろう。自立しなければいけないんだな。